2009年1月25日日曜日

ヘヴン

とても完成されているこのような映画に出会えると、私自身とても満足した気分で一杯です。こういう映画が本当の映画と言えるのではないでしょうか。音楽も最初から最後まで静かでとても効果的に使われています。映像とか風景もとても美しい。(というか私の好みです、色とか雰囲気とか。)

自分の明るい将来を捨て、自分自身の信念だけを信じて行動する青年。自分の意思と反してとんでもない罪を犯してしまった美しい女性。どこでどうやって惹かれあうのかなんて、誰にも、本人たちにすらわからない事ですよね。恋愛ってそういうものだと思うのです。話の内容的にはとてもシリアスで破滅的です。でも時間は事件が起こる前も起こった後も、いつも同じように過ぎて行く。そして事件が起きた事が夢なのではないかというぐらい、一日一日が淡々と過ぎて行く。

最後のシーンがとても切なくて、二人が音もなく消えてしまった時は下にいる人間たちがとても俗物的で汚い物にさえ見えてしまいました。二人はきっと、この世で生きて行くには純粋すぎて傷つけられてしまうだけなのです。二人は出会った時から「死」を意識していたでしょう。ヘリコプターに乗った時に、遂にそれを決行したのですね。二人らしい「死」への選択だと思います。

2009年1月12日月曜日

スイミング・プール

ただのサスペンス映画かと思っていたらとんでもない!っていうぐらい素晴らしい映画でした。

はっきり言ってしまうと、この映画はとある中年独身の女流作家の想像の中のストーリーなんですね。もしまだ映画を観ていない方がいましたら、ご覧になってからこの先を読んで頂いたほうがいいと思われます。(笑)作家のサラは人気作家だがスランプに陥っていて、しばらくの間南仏の編集長の別荘でのんびり過ごす事にします。美しい風景を観ながら、美しい別荘で、毎日散歩がてらブランチしにいくカフェで、彼女は作家という職業柄いろんな想像をして楽しみます。で、ここまでが実際に起こった事で、この先からのストーリーは全く彼女の想像での世界なんですよね。最後のシーンを観るまでは私も全く予想できない展開でした。別荘のプールを観て、きっと「こんな美しい若い女性が似合う場所だ」と思ったのかもしれません。そのあたりからジュリー(編集長の娘)が登場します。最初はうまくいかなかった二人ですが、ある事をきっかけに距離が縮まっていきます。それは彼女の一種の願望ではなかったのかと思います。親子ほど年の離れた女性同士、サラはきっとこんな娘がいたら、、、などと日常的に想像したりしていたのではないかなぁと思ったりしました。そして最後にジュリーが突然去り、彼女の小説もちょうど書き上がってパリへと戻るのです。ジュリーが自分の母親が書いた小説を出版するよう手伝って欲しいとサラにお願いする部分がありますが、これはきっとサラが別荘でその原稿を見つけたという事ではないのかなぁーと勝手に思ってしまいました。

最後のシーン、とても好きです。あの神経質でいつもしかめっ面のサラが、とても優しい表情で出版社へ出かける場面。いい仕事をやり遂げ、精神的にも落ち着いているのがよくわかりました。そしてそこで初めて会う編集長の娘は、自分の想像していた娘(ジュリー)とは全く違う雰囲気の子で、その子を見た時にサラはちょっと寂しそうに笑います。きっとジュリーの事を懐かしく思い出したのでしょう。最初から存在していなかったのだから、今後も会う事ができない南仏での美しい幻です。美しく、エロティックで幻想的な映画で、静かに淡々と映し出されていくこういう雰囲気の映画がとても好きです。

シャイニング

もしかしたらずーっと昔に観た事あったかもしれないのですが、今回はしっかりと観てみました。あまりホラー映画は観ないのですが、キューブリックとニコルソンに惹かれて観る事に。私的にはこういう謎解き的な映画はとっても好きです。色んな場所に話のヒントのような物が隠されているじゃないですか。こういうのを一つ一つ思い出して「振り返り」のような事を楽しむのが大好きなもので。(笑)

このホテルは死者によって呪われているというのはわかりますが、なぜジャックまでもがこの世界に引き込まれてしまったのか。それはここの「管理人」になった時点でその運命は決まっていたのです。というか、管理人になるという事すら既に運命で決まっていたのかもしれませんね。それは最後のモノクロの写真(1920年のバーの写真)に彼が映っていたので説明がつきます。これは私の勝手な見解ですが、彼は生まれる前にこのホテルで亡霊として住み着いていたんです。そしてこの世に生まれてこのホテルの管理人となる。そこまで既に決められていた事なのではなでしょうか??そこで知らず知らずのうちに邪悪な死者の霊たちによって洗脳されていくのです。「妻と子供を殺す」という事が本当の管理人の仕事だと言う事を。。。バーでの人々はみんな本当は死んでいる人たちで、そこで歓迎されるジャック。仕事を進めていくジャックを激励する元殺人犯。途中から超能力を使えなくなってしまったダニー。恐ろしく印象的な場面もたくさん組み込まれています。すぐに浮かんでくるのはエレベーターからの血の洪水だと思うのですが、無駄に広い廊下でダニーがミニカーで一人で遊んでいる時に突然ボールが転がってくるシーンなんかも、静かだけどとっても怖いと思ってしまいました。音楽や撮影方法にも凄くこだわりを感じられ、とにかく無駄な音は一切しないという事ですね。でもその分ほかの音が凄く目立ってしまい非常にリアルな雰囲気となっていました。ダニーがホテルのフロアを三輪車のようなものでグルグルと回るシーンがありますよね。ガーっと音がしていたかと思うとカーペットの上に乗った途端スーッと音がなくなる。広すぎる空間に響くタイプライターの音。無線の声。。。全てが本当に不気味に感じてしまいました。最後のハロルドが来るシーン、あんなに時間かけてやっと来てくれたって思ったところであっさり殺されてしまうなんて、さすが一筋縄ではいかない映画です。。とりあえず映画の中で唯一最初から最後まで正気でいてくれたのは奥さんだけで、奥さんの存在だけが頼りでした。最初は天然っぽい変わった奥さんなのかなぁ~という印象でしたが、かなり勇気のある頼りになる人でしたね。ダニーも迷路の中での足跡を隠すという作戦は、子供にしてはとても賢く冷静な行動でしたね~。とにかく役者さんもみんな素晴らしいし、子役さんも素晴らしい。(こんなに素晴らしいのに、この映画にしか出演していないのは不思議です。)でも1980年の映画ですから、今は30代後半ぐらいでしょうか?それはさておき、私はこれからニコルソンに対してこの恐ろしいジャックのイメージをしばらく払拭できなさそうです。


2009年1月11日日曜日

ルワンダの涙

「ホテル・ルワンダ」に続き、二作目のルワンダ紛争に関する映画です。この映画は「ホテル・ルワンダ」とはまた違った視点であの大量虐殺について描かれています。「ホテル・ルワンダ」がルワンダ人の視点で描かれているとしたら、この映画は駐在していたアメリカ人やヨーロッパ人たちの視点で描かれてると思います。

自分もナタで殺されるのが怖い。そして自分だけは助かる道がある。でも一緒に過ごした大切なルワンダ人たちを見捨てる事はできない。そういう葛藤に悩む若い白人教師の思いが凄く伝わってきました。誰だってそういう境遇に置かれたら、自分は助かりたいと思うでしょう。殺されるのは怖い。誰だってそう思うのは当たり前の事ですから。しかもここでの大量虐殺は銃殺よりもナタでの殺害が圧倒的に多かったのです。それがどれだけ恐ろしく苦痛を伴うのか、想像を絶する残虐さです。結局その白人教師は「見捨てる」という形でルワンダを去る事になりますが(実際は「見捨てた」というにはあまりに残酷な気がします)、その後何年経ってもその事は彼の心の中の暗闇となって一生死ぬまで付きまとう事になると思います。彼はそこでルワンダ人と共にナタで殺されていても、逃げて生き延びても、どちらにしても苦しむ事になってしまったのです。

観ていてやりきれない気持ちになってしまう映画ですが、最後のシーンでとても救われる想いがしました。こんなにも傷つけられ、もうこれ以上傷つけられる事はないんじゃないかというぐらい傷つけられたルワンダの方たちが、このような映画製作に携わってくださった事に深く敬意を表したいと思います。どんな窮地に追い込まれ、自分が犠牲になるとわかった時にでも「犠牲は最大の愛」と言って死んで行った神父様や、家族の遺体の下に隠れて死を免れた少年。。。この日本にいる限り、彼らの気持ちは一生理解できないかもしれません。それでも笑顔で頑張っている前向きな姿に、今の自分の生き方に対して疑問を抱いてしまいました。

ハッピーフライト

私が映画館に行ってこの手の映画を観るのは誰かに誘われた時のみです。(笑)今回ももちろんそんな感じで、でも元々綾瀬はるかさんがとても可愛らしくて好きなので誘われるがままに行って参りました。まずは、ANAの全面強力&宣伝が凄い!という事を改めて思いましたねー。まぁ映画の宣伝している時から凄いなって思ってましたけど、ここまでとは。。。

まぁそこは置いといて、肝心の映画の話をしましょう。こういう映画って私的にはとても好きです。それはただの娯楽映画的要素だけで終わっていないからです。この映画で面白いと感じた所は、専門用語をそのまま使っていたり一般人には知られていない航空業界の内部について細かく描かれているところです。最近は医療モノもこれでもかってぐらいありますが、そういうのって専門的な物に対して変に説明しちゃってる部分ってあるじゃないですか。でもこの映画ってそこは違うんですよね。その道のプロフェッショナルな部分と、マニアックな部分と、全部そのまま淡々と描いている感じでした。だから観ていて新鮮で面白かったです。私の予想では新人CA(綾瀬はるか)が中心になっているドタバタ系のファミリー映画だったのですが、全然違いましたね。航空関係のあらゆる業種の人たちにスポットを当てて、話の展開もテンポ良く、素直にとっても楽しかったです。きっと本物の方たち(実際に航空業界にいる方たち)が観たら、ここは違うとか色々と文句が出そうな部分はあるでしょうが、それはまぁ映画という事で許容範囲ではないでしょうか。これを観ると、格安航空券って本当に安いんだんぁ~。こんなに安くて大丈夫??って思ってしまうと思いますよー。これだけ色んな人が関わっていて絶対に間違いは許されない厳しい仕事なのだから、航空券が高くても仕方ないって思ってしまいました。

2009年1月6日火曜日

ホテル・ルワンダ

今までルワンダの内戦について詳しく知らなかったのですが、この映画で全ての事が伝わってきたような気がしました。そしてルワンダ内戦がなぜ他の国と事情が違うのか、それをきちんと知ろうとしなかった自分をとても恥じます。

ルワンダの紛争がなぜ起きたのか、それは二つの民族「フツ族」と「ツチ族」の柵が何十年にも及んでいた事が根底にあるのですが、90年~94年にかけてそれが活発化し、やがて他国の入る隙がないほどに大きなものになってしまったのです。なぜ民族が違うだけでここまで憎しみ合い大量虐殺にまで及んだのかその人々の精神についてはあまり理解できませんが、でも実際に世にも恐ろしい内戦が起こってしまったのです。最初は他国が和解させようとしたり国連軍が守ってくれたりもしていました。しかし状況が悪化するにつれて他国が少しずつ手を引き(簡単に言うと見放したんです)、遂には身に危険を感じた国連軍まで引き上げてしまいました。最後の砦だった国連軍から見放された人々は、一体何をあてにして生き延びればいいのでしょう。国連軍も国を見捨てる事があるんだなぁ、、、と、映像の中の人と同じように私も相当ショックを受けました。最後に頼れるのは身内だけなんですね。。。しかも、その見捨てた時の理由として「ルワンダは他国において、そこまで重要な国ではない。ルワンダがどうなろうと自分の生活には影響が全くない。」などの事を述べていましたが、これを聞いて本当に切ない気持ちで一杯になってしまいました。そしてルワンダの実情をいくら報道で伝えても、所詮他国の人は人ごとで「あぁ、ルワンダって怖い国だね」で終わってしまうと、一人の報道マンが言っていましたが全くその通りかもしれないです。そこですぐに何か支援をしようと思える人なんて、ほんの少ししかいないのが現実だと思います。結局みんな他人の事なんてどうでもいいんです。それは身近な人間関係にでも言える事なんじゃないかと感じます。話は聞くし、あぁ大変だね、可哀想だね、何か手伝おうか?大丈夫?なんて言葉はいくらでもかける事ができます。でも一体すぐに行動を起こしてくれる人って自分の周りにどれぐらいいるか考えると、そう多くはないと気づきますよね。

この映画を観て、ルワンダについて凄く興味を持ちました。そして今また同じように苦しんでいる国があったとしたら、月並みな表現ですが同じ人間として何かできる事はないかと真剣に考えさせられました。それは「何かをやってあげる」のではなく、「自分のために何かをしたい」という気持ちによって突き動かされるものなのです。